歯をカチカチ鳴らすと健康になる?江戸時代のベストセラー『養生訓』に学ぶ歯の話

江戸時代の中期、『養生訓(ようじょうくん)』という本がベストセラーになったことをご存じでしょうか。貝原益軒(かいばらえきけん)という儒学者が執筆した健康実用書で、臨床経験に基づくさまざまな健康法を説いています。昨今、あらためてブームとなり、現代語訳が多数出版されている『養生訓』から、歯と健康の関係、歯や歯茎を健康に保つ方法などを紹介します。

84歳まで健康だった貝原益軒は歯を1本も失っていなかった!

『養生訓』が読者の支持を得たのは、著者の益軒自身が健康であったからだと考えられます。生来虚弱で病に苦しんでいましたが、さまざまな健康法を実践して長生きしたため、その内容に説得力があったのでしょう。

あらゆる医学書を読み、自分や家族のための薬を処方するほどに勉強熱心だった益軒は、『養生訓』の記述によると84歳になっても歯を1本も失っておらず、歯の状態が健康に影響を及ぼすことを認識していました。これは、80歳で20本以上の歯を残そうという「8020運動」をはじめとした、予防歯科の動きにもつながります。益軒の健康法は、現代においても、信ぴょう性が高いといえるでしょう。

病は口から入る?健康と歯の関係

益軒は、『養生訓』で健康と歯の関係について考察しています。例えば、「病気は口から入る食べ物によって起きるため、その入り口には注意が必要である」「歯の病気は胃腸と関係が深く、歯の状態が悪いと消化不良を引き起こす」など、さまざまな指摘をしているのです。どちらも歯の健康状態が全身の健康にも影響することを伝えるもので、歯や歯茎を常に清潔に保つことの重要性を訴えています。

歯や歯茎を健康に保つ方法を一挙紹介!

『養生訓』は、歯や歯茎を健康に保つさまざまな方法を説いています。ここでは、その一部をご紹介しましょう。

  • 朝はぬるま湯で口をすすぎ、干した塩で歯と歯茎を磨いたら、ぬるま湯で20~30回口をすすぐ
    歯みがきの方法として、湯や塩を使い、数十回すすぐことを勧めています。口腔内の衛生を徹底して保つべきという意図が感じられます。
  • 爪楊枝で歯の根を深く刺してはいけない
    江戸時代は、歯みがきに爪楊枝(つまようじ)を使っていました。爪楊枝を深く刺すと歯茎を傷つけ、腫れて痛むことがあるため、注意を促していたようです。
  • 唾液はなるべく飲み込む
    唾液を飲み込むと老化の予防になると説いています。また、唾液の量が多いと消化液の分泌も多く、体が若いことを意味するとも述べています。
  • 食後はお茶で口をすすぐ
    お茶に含まれるカテキンには抗菌作用があり、細菌の増殖を抑えて虫歯や口臭の予防につながります。益軒もこの効果を学び、実践していました。
  • 1日35回、歯をカチカチ鳴らすと歯の病気にならない
    禅宗の健康法で、歯を鳴らすと歯や歯茎が鍛えられ、虫歯や歯周病を防ぐ効果があると考えられていました。

このような健康法は、現代ほどセルフケアの方法が浸透していなかった江戸時代に、庶民への注意を促す重要な提言となっていたのです。

古来の知恵を日常のセルフケアの参考にしよう

江戸時代のベストセラー『養生訓』を読むと、300年以上前から歯と健康に関連性があると認識されていたことがわかります。現代の感覚からすると突飛なものもありますが、科学的に正しいと考えられているものが多くあるのです。ときには、古来の知恵を日常のセルフケアの参考にするのもいいかもしれません。

参考:『養生訓』(貝原益軒著、城島明彦訳、致知出版社)